ここでは、Journal of Monetary Economics等の学術誌に掲載が予定されている最新のDSGE論文の中で、「現代マクロ経済学講義」で解説しているテクニックのみで読み解くことが可能なものを紹介しています。 「ニューケインジアンモデルにおける実質賃金の硬直性の役割」 "Real Wage
Rigidities and the New Keynesian Model," by Oliver Blanchard and
Jordi Gali, Journal of Money, Credit and Banking
39. <click HERE> 金融政策のトレードオフ---例えば原油価格が高騰した場合、中央銀行にとって、利上げも利下げもどちらもコストが発生する---が発生するためには、実質賃金の役割が欠かせないことを簡単なモデルで論証する。さらに、実際のデータで観察される「インフレの慣性」についても、実質賃金の硬直性を取り入れることで、ひとつの回答を導くことができることが明らかにされている。ごく単純なニューケインジアンモデルで、洞察に富む結果を導き、かつ、実証面でも優れた結果を出しているため、必読の一本。さらに、この論文のアイデアを適用し、先進諸国におけるオイルショックの影響を分析した、NBERワーキングペーパー「なぜ2000年代におけるオイルショックの影響は小さいか」も、DSGEモデルの優れた応用例といえる。 「流動性効果が発生するNew
ISLMモデル」 "Time-to-build, time-to-plan,
habit -persistence, and the liquidity effect," by Rochelle
Edge, forthcoming in Journal of Monetary
Economics.
<click HERE> テキスト2章で論じたように、New
ISLMモデルでは流動性効果が発生しない。この欠陥を補うために、どのような「ピザの具」を追加すればよいか論じている。具体的には、実質金利の上昇を抑えるために、資本ストックの調整コストを極端に大きくしたり、消費のラグ(Habit
formation)や投資のラグ(Time-to-plan)を取り入れるとリーズナブルな大きさの流動性効果が発生する。 「金融政策が資産価格に反応する場合の問題点」 "Asset
prices, nominal rigidities, and monetary policy," by Charles Carlstrom
and Timothy Fuerst, forthcoming in Review of Economic
Dynamics.
<click HERE.> テイラー・ルールを若干変更し、資産価格に直接反応するように設定すると、均衡が非決定になる(Blanchard=Kahn条件が満たされない)可能性が高いことを論証。 「貨幣需要のミクロ的基礎付けを持つDSGEモデル」 "Variability of velocity of
money in a search model,” by Weimin Wang and Shouyong
Shi, Journal of Monetary Economics 53, (2006) pp. 537-571. <click HERE.> Kiyotaki=Wright型サーチ理論に基づく貨幣需要を取り入れたトラクタブルなDSGEモデル。CIAでもMIUでもない厳密なミクロ的基礎付けを持つ、ほぼ最初のトラクタブルなDSGEモデル。本書4章で扱ったBlanchard=Diamond型マッチング関数を、労働市場だけでなく財市場における財の交換についても取り入れた結果、CIAでは常に一定(=1)になってしまう貨幣の流通速度の現実的な変動を説明している。 「DSGEモデルのベイズ推計」 "Shocks and frictions in US
business cycles: a Bayesian DSGE approach,” by Frank
Smets and Rafael Wouters, American Economic Review 97,
(2007) pp. 586-606. <click HERE.> "Model fit and
mode selection," by Narayana Kocherlakota, Review, Federal
Reserve Bank of St. Louis, issue July-August 2007, pp. 349-360. <click HERE.> 前者は、第1章補論で触れたDSGEモデルにおけるディープパラメータの推計手法としてのマルコフチェーン・モンテカルロ法(MCMC:ベイズ推計の一種)を扱ったランドマーク論文。MCMCに興味のあるエコノメトリシャンは、上記論文とともに、Simsの講演原稿、"Bayesian method in applied econometrics, or Why econometrics should always and everywhere be Bayesian"<click HERE>にも目を通すと展望が得られる。一方後者は、MCMCにおいてショックの識別とモデルのフィットを優先させると、全く間違ったモデルを構築してしまう可能性があることを指摘している(両論文ともテキストで扱っているテクニックの範囲を超えているため、あくまで推計手法に興味のあるエコノメトリシャン向け)。 「DSGEモデルによるモンテカルロシミュレーション:クレジット・クランチは検出できるか」 "A Note
on Pitafalls of Credit Crunch Regressions,” by
Ryo Kato, forthcoming in Economics Letters. <click HERE.> Hayashi and Prescott (2002)型の回帰分析がクレジット・クランチを検出できない可能性があることをDSGEモデルを用いて示している。計量分析で借り入れ制約が棄却される場合でも、実際には制約がバインドしていることがありうる。DSGEモデルの実践的な利用例。
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